多くの人が取得を考えるビザの一つとして、マレーシアのMM2Hビザがあります。リタイアメントビザではありますが、既に仕事をリタイアして年金生活を送っている人に限らず、若い人であっても問題なく取得できるビザになります。

そのためいま仕事をしている個人事業主・フリーランスであっても、お金さえ積めば問題なくMM2Hを取得してマレーシアに住めるようになります。

ただ自営業である以上、移住するにしても、日本に住みながらMM2Hビザを保有するにしても仕事は継続することになります。そうしたとき、特にマレーシアへ本格的に移住する場合は税務上のトラブルを生じやすくなり、慎重に考える必要があります。

ここでは自営業者がMM2Hビザを取得するに当たり、事前に理解するべきポイントを解説していきます。

自営業者でもMM2Hは申請可能だが収入証明で苦労する

会社員として勤務している人がMM2Hビザを取得するのは普通です。ただ、個人事業主・フリーランスであっても問題なくMM2Hビザを取得できるようになっています。

50歳未満の場合、MM2Hビザを取るときの要件として「50万リンギット(約1,500万円)の資産証明」「マレーシア国内での30万リンギット(約900万円)の定期預金」があります。ただ、これらを満たせば自営業者でもビザを取れるというわけです。

・給与証明で必要な提出書類を理解する

ただ個人事業主・フリーランスだとMM2Hビザの取得で必ず困るケースが発生します。それが収入証明です。毎月1万リンギット(約30万円)以上の収入があることを証明しなければいけません。

しかしサラリーマンなどとは異なり、自営業で給与明細が出されることはありません。そのため収入証明でフリーランスの全員が困るわけですが、このときは以下の書類を活用するといいです。

  • 確定申告書類
  • 給与明細の作成

どちらの方法でもいいですが、それぞれについて確認していきます。

確定申告書類を提出する

最も分かりやすく、確実な方法が確定申告書類の提出です。青色申告であれ白色申告であれ、個人事業主であれば全員が毎年の確定申告をしていると思います。このときの書類をMM2Hビザの申請で活用するのです。

以下のような確定申告書類がどこかに眠っているはずなので、これを探すようにしましょう。

収入証明の計算方法としては、単純に「年間の収入 ÷ 12ヵ月」で算出できます。収入証明とはいっても、必ずしも毎月の給与明細を提出しなければいけないわけではありません。年間の収入から換算して提示するのは問題ないため、ほとんどの個人事業主・フリーランスが行う手法になります。

最も手軽で確実な方法のため、自営業の人はこうしたやり方によって事業所得での収入を提示するようにしましょう。

3ヵ月分の給与明細を作る

しかし中には、特別な事情によって確定申告書類の提出が微妙なケースもあります。例えば、以下のようなケースになります。

  • 開業して1年が経過していない(まだ確定申告をしていない)
  • 貯金はあるが、前回の確定申告の収入が毎月1万リンギットを満たしていない

この場合、仕方ないのでその他の方法を考えるようにしましょう。具体的には、自ら給与明細を作ってしまいます。自営業の人が給与明細を作るのは初めてのケースがほとんどだと思います。ただ、そうしたフォーマットをダウンロードしたうえで作成するのです。

MM2Hビザでは3ヵ月分の収入証明が求められます。そこで3ヵ月ほど1万リンギットを超えるように給与明細書を作り、実際に事業用口座からあなたの個人口座へお金(給料分)を移動させます。

これにより、自作自演によって収入証明をするための書類を作れます。あとは3ヵ月分について、給与明細と銀行通帳コピーを提出することで収入証明が完了します。

MM2Hは納税者番号がなく、どこにも納税しないのは微妙

そうしてMM2Hビザを取得することになりますが、このときMM2Hを単に取得するだけなら特に大きな問題はありません。マレーシアにて銀行口座を開設したいためにMM2Hビザを取る人はそれなりにいますが、この場合に継続して日本に住むのであれば、自営業の人はそのまま日本でビジネスを継続するといいです。

一方で問題になるのは、実際にマレーシアへ移住する人です。個人事業主・フリーランスの人がMM2Hでマレーシアに移住するとき、注意点があります。それは、税務上のトラブルです。

まずMM2Hビザはリタイアメントビザのため、現地企業に就労できず、納税者番号は付与されません。

フリーランスだと、日本の顧客を相手にすることになります。そのため、マレーシアへ移住したとしても問題なく日本企業を相手に仕事を続けることができます。あくまでもマレーシアの企業に就職できないだけであり、日本の顧客に対して継続してサービスを提供するのは問題ないのです。

しかしこの場合、マレーシアで納税者番号がないので、マレーシアに税金を納めることがありません。その結果、日本で確定申告しないとトラブルになります。

税務調査で指摘されると反論できない

なぜこの状況が非常にまずいかというと、税務調査で指摘されると何も反論できないからです。つまり確定申告しないと、後で高額な追徴課税をされる可能性があります。

通常だと、日本を離れて海外へ移住した場合、日本で納税することはありません。そのような税制になっているからです。ただこれには「現地の国できちんと納税している」という大前提があります。海外に住んでいる日本人が日本で納税する必要がないのは、現地の国で税金を納めているからなのです。

現地の国に税金を納めていれば、それ以上の課税(日本での二重課税)はないと明確に決められています。

しかしマレーシアでの納税番号が付与されておらず、どこの国にも納税していなければどうでしょうか。この場合、税務署から指摘されたときに反論できず、高額な税金を追徴課税されると考えましょう。

・住民票を日本に残し、確定申告するといい

そこでマレーシアへ移住するにしても、住民票を日本に残し、確定申告するといいです。日本に住んでいるときと同じように確定申告するわけですが、確定申告の時期に日本へ戻って書類を提出する(またはe-Taxにてネット上で申請する)ようにしましょう。

これであれば、日本で納税することになるので確実に問題ないといえます。

「非居住者の源泉徴収なし」は利用できない

つまりマレーシアに移住するにしても、個人事業主・フリーランスは節税することができないと考えましょう。すべての税制については、基本的に日本に従うようになります。MM2Hビザで納税者番号が付与されておらず、マレーシアで納税していない以上、これについては諦めるしかありません。

ちなみに個人事業主の場合、お金を受け取るときに源泉徴収されることがよくあります。こうした源泉徴収については、マレーシアへ移住した後も続くと考えましょう。

通常、海外に住んでいる人(日本の非居住者)だと、フリーランスであっても源泉徴収はありません。日本で納税することがなく、現地で税金を納めるため、日本の所得税は関係ないからです。

・「非居住者の源泉徴収なし」は適用されない

しかしMM2Hビザで移住している人だと、前述の通りマレーシアで納税することはなく、日本で確定申告・納税するのが基本です。そのため、海外に住んでいる人へ適用される「非居住者の源泉徴収なし」は関係ないと考えるようにしましょう。

つまりすべてにおいて日本の税制に従うのが、MM2Hでマレーシアへ移住した日本人が行うべき正しい行動だといえます。

収益があるならラブアン法人を立ち上げるのが大原則

ただ日本は世界的に見ても異常なほど税金が高い国として知られています。そのため個人事業主・フリーランスでこうした税金を支払いたくない場合、MM2Hビザではなく他のビザを取得しなければいけません。具体的にはラブアン法人を設立します。

ラブアン法人を設立する場合、以下のような法人登記の証明が発行されるようになります。

マレーシアには法人として「一般的な法人」「ラブアン法人」の2種類があります。ラブアン法人はオフショア法人(税金がほとんど課せられない法人)で知られており、法人税率3%です。また、個人の所得税は年間で約12万円です。

そのためビジネスである程度の収益がある人は多くがラブアン法人を設立し、マレーシアへ住むようになります。

MM2Hビザとは異なり、ラブアン法人では就労ビザとなるため、自動的に納税者番号が付与されます。法人税や所得税を支払うことになるので当然ではありますが、マレーシアへ税金を支払うことになるので、日本での納税義務はなくなるというわけです。

そのため自営業者がマレーシア移住する場合、以下の2つのうちどちらがいいのか考えるようにしましょう。

  • MM2Hビザ:日本で確定申告し、日本へ納税する
  • ラブアン法人(就労ビザ):オフショア法人にてマレーシアへ納税する

毎年の利益がそこまで大きくない場合、MM2Hビザが最適です。一方でそれなりに利益額が大きい場合、ラブアン法人での就労ビザが一般的です。自分でビジネスを動かす個人事業主・フリーランスだと、ビザ取得には2つの方法があることを理解しましょう。

自営業者のマレーシアビザ取得の方法を把握しておく

日本からの移住先として非常に人気の国がマレーシアです。そうしたマレーシアに興味をもつ個人事業主・フリーランスは多いです。

ただ、このような自営業者がMM2Hビザを取得する場合、事前にいくつか考えなければいけないポイントがあります。一つが収入証明です。多くの人が収入証明で困ることになるため、確定申告書類や給与明細作成などを用意することで乗り切るようにしましょう。

また、そもそも「MM2Hビザが必要なのか?」という問題もあります。MM2Hビザを保有しつつ日本に住む人なら問題ないですが、マレーシアへ実際に移住する場合、納税をどう対処するのか前もって理解する必要があります。MM2Hでは日本へ納税するのが大原則のため、MM2Hをやめてラブアン法人にするべきか事前に判断しましょう。

サラリーマンや定年退職者がMM2Hビザを取得するのとは異なり、自営業だとMM2Hビザを取得するに当たり、特殊な悩みが出てくるようになります。そこで、これらの疑問を解消したうえでMM2Hビザを申請するようにしましょう。