マレーシアは移住先の国として非常に人気であり、何年も人気ナンバーワンとなっています。そこで生活コストの高い日本ではなく、南国のマレーシアにてゆっくり時間を過ごしたいと考える高齢者は非常に多いです。

こうした長期滞在ビザを取得するに当たり、年金でのリタイア生活を送る人だと、事前に考えなければいけないポイントがあります。

その中で最も重要なのが必要書類であり、収入証明を取得しなければいけません。いま働いていない人であっても、収入証明を提出する義務があるのです。またマレーシアでの生活費について理解し、どれくらいのコストがかかるのか考えなければいけません。

そこで年金生活を送る人がマレーシア移住して生活するに当たり、何に注意すればいいのか解説していきます。

50歳以上だと、必要要件が若い人より少ない

MM2Hビザは若い人でも問題なく申請できます。ただ中身はリタイアメントビザであるため、既に仕事をリタイアした定年退職者がターゲットとなります。そうした老後を過ごそうと考えている人について、マレーシアにて消費や投資をしてもらおうというわけです。

そのため50歳以上の人については、MM2Hビザへ申請するときの要件が若い人に比べて緩和されています。それぞれ、以下のようになっています。

50歳未満 50歳以上
財産証明 50万リンギット(約1,500万円) 35万リンギット(約1,050万円)
定期預金 30万リンギット(約900万円) 15万リンギット(約450万円)
収入証明 月1万リンギット(約30万円)以上の収入

マレーシア政府へ提示する保有財産については、50歳以上だと35万リンギット(約1,050万円)で問題ないとされています。またマレーシアの銀行へ預ける定期預金については15万リンギット(約450万円)です。

こうした条件を満たすことで問題なくMM2Hビザを取得できるため、年金生活を考えているリタイア者は50歳未満の人よりもMM2Hビザを取得しやすいといえます。

収入証明が唯一、大変な条件になる

ただ問題になるのが収入証明です。MM2Hビザを取得する場合、月1万リンギット(約30万円)以上の収入があると証明する必要があり、これには働いている人に限らず、既に会社を退職してしまった人も含まれます。

しかし定年退職してしまったり、嘱託職員として勤務していたりすると、月1万リンギット以上の収入証明を提出することができません。実際、年金があるにしても以下の通り月30万円(年間360万円)ほどに届いている人などいません。

年金収入があるとはいっても、例えば厚生年金だと男性では平均で月16万円ほどの年金額になります。つまり、残り14万円ほどの収入証明分が不足することになります。この場合、どうすればいいのでしょうか。

・株の配当など、裏技はある

年金だけでいまの収入が低いという場合、その他の方法を利用することで収入を作らなければいけません。その一つの方法として投資があります。株式へ投資し、毎月の配当を得ることでそれを提示する方法でも問題ないからです。

毎月の高配当を得られる株としては、米国株で知られる「iシェアーズ iBoxx米ドル建てハイイールド社債ETF(HYG)」が最も有名であり、特別な理由がない限りはこれの一択になります。毎月配当であり、以下のように年利5%を超えるインデックス株式投資になります。

月14万円を得るためには、仮に年利5%だとすると3,360万円を投資すれば問題ない計算になります。これと年金収入を加えることで、収入証明として月1万リンギットをクリアできます。

もちろんずっと投資しておく必要はなく、3ヵ月の期間だけこうした株式投資を行い、収入証明の条件をクリアしたあとは元通り現金化すれば問題ありません。そのため資産がある人だと、投資収益を作ることでほぼリスクなく収入証明の実績を生み出すようになります。

ちなみに収入証明は夫婦で合算させることも可能なため、夫婦で年金を得ている場合、収入証明の条件はより低くなります。もちろん夫婦で合算させる場合、先ほどの例よりもかなり少ない資金を株式投資に回すことで、一時的に配当収入を作って収入基準を満たせるようになります。

・個人給料を作ることは可能

また年金生活を送っている人だと、どこかの組織に属しているわけではないため、「個人事業主と同じ」とみなすことができます。個人事業主だとMM2Hの申請では「自分で給与明細を作り、事業用口座(ビジネス口座)から自分の口座へお金を移す」という自作自演をすることで収入証明が可能です。

そこで本当は特にビジネスをしていないにしても、日本でビジネスをしていることにして給与明細を自分で作り、個人口座から個人口座へお金を移す(例えば自分のゆうちょ銀行口座から三菱UFJ銀行の口座へお金を移す)ことで収入証明を作成します。

グレーなやり方にはなりますが、真っ当なやり方で貫いたとしても退職者は現実的にMM2Hビザの収入証明が無理なため、こうした方法によって必要書類を作ることも可能です。

一番いいのは、退職前に収入証明を取得する方法になります。ただ「既に定年退職している」「働いてはいるが収入が低い」という場合、こうした裏技を利用することでMM2Hビザを取得します。

老後を過ごすには生活費を考えるべき

こうしてMM2Hビザの申請を通すにしても、次に考えるべきポイントに生活費があります。

MM2Hビザはリタイアメントビザという性質から、マレーシア国内での就労は不可能になっています。つまり、マレーシア現地の企業へ就職することはできません。

若い人はMM2Hビザを取得して現地に住むというより、マレーシアへ自由な投資をするために取得する人が多いです。これは、現地での就労ができないからなのです。ただ年金生活のリタイア者だと現地で働くことはしないので就労の問題は関係ありません。ただ生活していくにはお金が必要なため、現地での生活費を理解する必要があります。

月10万円あれば問題なくマレーシアに住める

これについて、マレーシアでは日本に比べて物価が非常に安いです。そのため、生活費は日本よりも低くなります。

ただ「マレーシアは日本の3分の1の生活費」といわれていますが、これは正確ではないです。現地のローカル民が住む場所だと、確かに物価は3分の1以下になります。ただそうした家だと「シャワーなし」「エアコンなし」は普通であり、衛生環境も悪いので日本人が住むことはありません。

私もマレーシアに住んでいますが、日本人だとほぼ100%コンドミニアムに住みます。例えば、以下はクアラルンプールの日本人街で知られるモントキアラの様子です。

つまり現地の高級住宅街であり、イメージとしては「日本に住むよりも生活費が3分の2くらいになる」と考えれば問題ありません。ローカルのような安い値段ではないものの、日本に比べると物価が低いというわけです。

日本でも東京・銀座だとあらゆるものが高いですが、これと同じ感覚だと考えれば問題ありません。

そうしたとき、クアラルンプールであればこうした高級住宅街に住むにしても、月10万円もあれば圧倒的に裕福な暮らしができます。例えばクアラルンプールだと、豪華なコンドミニアムに住んで以下のような支出です。

  • 家賃:月6~7万円
  • 電気代:月1万円
  • ガス、水道などその他の公共料金:月1,000円と誤差の範囲
  • 食事代:月2~3万円

もちろん家のグレードや住む場所を選べば、月4〜5万円ほどでコンドミニアムに住むこともできます。ただ、そうした金額でもプールやテニスコート、ジムのあるコンドミニアムに住めます。

銀行の定期預金や投資でお金をねん出する

またマレーシアに住む場合、収入は年金だけでなく他にも増えるようになります。まずMM2Hビザでは必ず定期預金をしなければいけないため、銀行から利息が振り込まれるようになります。

マレーシアの場合、金利が約3%で知られています。50歳以上の人がMM2Hビザを取得する場合、前述の通り15万リンギットを必ず定期預金しなければいけません。つまり、「15万リンギット × 3% = 4,500リンギット(約13万5,000円)」が振り込まれるようになります。

他には、マレーシアに住んでいるので投資をしても問題ありません。日本だと高配当株はほぼ存在しませんが、先ほどの米国株で出した例のように、世界には高配当株が非常にたくさん存在します。しかもこれが途上国のマレーシアとなると、有名企業でさえも高配当です。

例えば、以下はマレーシア一番の銀行で知られるMaybankへ投資したときの年間配当です。

このように、年間利回りは5%を超えています。マレーシアでは銀行という非常に安定した会社へ投資したとしても、このように高額な配当金を得ることができます。MM2Hビザによって日本ではなくマレーシアにて投資すれば、それだけで年金以外の投資収入を得られるようになります。

ちなみに日本とは違い、マレーシアでは銀行の定期預金や株式投資で得た利益は税金ゼロのため、投資で儲けたお金はすべて自由に使うことができます。

クアラルンプール以外の地方でコストを抑えてもいい

また生活費を考えるという意味であれば、クアラルンプール以外に移住しても問題ありません。もちろん移住先の候補として最有力なのは首都クアラルンプールであり、巨大な日本人街もあって生活で苦労することはありません。

ただジョホールバル(マレーシア第二の都市)やペナン(世界遺産の都市)などにも、多くの外国人が住み着いています。こうした場所にいる日本人もたくさんいますし、インター校もそれなりにあるので家族で移住したとしても困ることはありません。

さらにはクアラルンプールに比べると生活コストがかなり低くなり、ジョホールバルやペナンだと「クアラルンプールに比べて3分の2ほどに生活コストが下がる」と考えましょう。

日本でも、東京ではなく福岡に住めば「ある程度の規模の都市ではあるが、家賃を含め生活コストが大きく下がる」ようになります。これと同じ現象がマレーシアでも起こるわけです。

そうしたときジョホールバルであれば、30分ほどでシンガポールへ行けるため、シンガポール・チャンギ国際空港から世界中どこでも行けます。

またペナンだと空港での利便性は劣りますが、生活コストはさらに下がるようになります。ただ世界遺産の都市であり、以下のようなイギリス植民地時代の面影がいまでも残っています。

老後生活を送るだけであれば、特にクアラルンプールにこだわる必要はないため、生活費まで考慮しながらリタイア後に住む都市を探すといいです。

子供や孫も移住するなら、贈与税・相続税がゼロになる

ちなみに老後についてマレーシアで年金生活を送るとき、夫婦だけの移住なら関係ないですが、子供または孫まで含めて移住する場合は税金面でのメリットが非常に多くなります。具体的には、贈与税や相続税がゼロになります。

マレーシアには贈与税や相続税はありません。そのため、相続の場面では圧倒的に有利だといえます。

MM2Hビザの取得を考えて移住する人だと富裕層も多いです。そうした人の場合、マレーシアへ移住して10年が経過していれば贈与税・相続税について日本の税制は適用されず、マレーシアの税制で考えるようになります。

なお条件があり、このときは財産を渡す人、財産を受け取る人の両方が海外で過ごしている必要があります。そのため片方だけがマレーシアに移住しても意味がありません。

これが、子供や孫を含めて家族で移住する人に贈与税・相続税のメリットがある理由です。ただ富裕層だと財産を海外へ逃がし、10年以上が経過した段階で財産を親族へ移すのは一般的な節税方法です。こうした節税については、家族で移住する場合は誰でも行えるというわけです。

子供や孫の状況にもよりますが、MM2Hビザでマレーシアにて年金生活を送るのであれば、こうした節税法が存在することも視野に入れて将来のプランを考えるといいです。

老後生活をマレーシアで過ごすため、MM2Hビザを利用する

仕事を辞めてリタイア生活を送ることを考えたとき、老後生活をどこで送るのかは非常に重要だといえます。そうしたとき、日本ではなくマレーシアに住むことでロングステイを実現したいと考える人はたくさんいます。

そのため海外にてのんびり過ごしたい場合、MM2Hビザを活用するようにしましょう。日本だと日常生活面ですべてが高額であり、またスーパーから遠い場所に住んでいて不便な人は多いです。

ただマレーシアの場合、スーパーが近くにある高級コンドミニアムに住んだとしても、すべて含めて月10万円ほどの生活費に抑えることが可能です。

また年金生活とはいっても、夫婦で合わせればそれなりの年金額になりますし、マレーシアにて定期預金や株式などへ投資すれば、優れた年利にてお金を得ることも可能です。日本だとお金は減るだけですが、マレーシアだとむしろ増やすことができます。

そのため老後の年金生活を考えている場合、マレーシアへの移住はおすすめです。MM2Hビザを取得し、南国の自由な雰囲気で限りある人生を過ごすのは非常に有意義だといえます。