1997年にタイを震源地として広がった金融危機がアジア通貨危機です。新興国通貨の価値が暴落することにより大きな打撃を受けた結果、多くの国で経済が疲弊していったというわけです。事実、アジアとは関係ない国を含めて経済危機が発生しました。

アジア通貨危機の原因はドル高政策や固定為替相場制、新興国の悪い経済状況です。なおネット上では「ヘッジファンドがアジア通貨危機の原因」と記されているものの、これは誤りです。知識のない人だと、そのように解釈するようになります。

なお、アジア通貨危機の一番の原因はアメリカです。歴史をひも解くと、ほとんどの金融危機はアメリカが原因となっています。

なぜアジア通貨危機が発生したのか学びましょう。投資の世界で勝つためには、過去の歴史を知る必要があります。そうしたとき、重要な出来事の一つがアジア通貨危機です。

固定為替相場制により、通貨危機がタイ・バーツで発生した

アジア通貨危機という言葉からわかる通り、アジアを中心にして通貨危機が発生しました。具体的にはタイ・バーツの価値が大幅下落し、通貨の価値が非常に低くなったのです。

いまではほとんどの国が変動為替相場制となっています。日々、為替レートが動いているのは誰もが知っています。ただ当時、アジアでは日本や台湾、フィリピンを除きアジア諸国は固定為替相場制を採用していました。つまり、為替の価格が動かないというわけです。

固定為替相場制とはいっても、政府が宣言しているだけであり、実際には為替は動きます。つまり為替は日々変動するわけですが、政府が無制限の為替介入をすることによって固定相場へと無理やり変えるのが固定為替相場制というわけです。

つまり実際には変動為替であるものの、政府の介入によって固定相場になっているのです。まずは、この事実を学ばないとアジア通貨危機が発生した理由を理解できません。

そうしたとき、1997年にタイ・バーツが急激に売られるようになり、タイ政府が「もう固定為替相場制を維持するのは無理。変動為替相場制へと移行する」と宣言し、タイ・バーツの変動為替相場制を採用しました。こうして、実際にタイ・バーツが暴落して経済危機へと陥ったのです。

短期資金を長期資金で運用し、経済危機が発生する

それでは、なぜアジア通貨危機が発生したのでしょうか。この理由として、非常にリスクの高い方法によってアジアの国々が資金調達していたことがあります。

当時、新興国の金利は非常に高かったです。例えばインドネシアの場合、当時は年利20%以上でした。タイについても、当時は年利10%以上でした。

※出典:「内閣府・通貨制度に関するアジア地域の経験」より引用

あなたが投資家であれば、このように高い利率で儲けたいとは思わないでしょうか。これらの国は固定相場制を採用していたため、これらの国に投資すれば、リスクなしで年利10~20%以上が可能です。増やしたお金を米ドルや日本円に変換するにしても、固定相場なのでお金の価値は一定です。

そのため「固定相場」「高い利率」という条件が重なり、海外の投資家は積極的にこれらの国の通貨で投資し、資産運用していたというわけです。なお、こうした投資マネーは短期(1年以内)で返済しなければいけない短期資金となります。

ただ高い利回りを出すためには、それ以上の利益を得なければいけません。これらの国は当時、年10%以上の経済成長率であり、高金利であっても問題なかったのです。そうして海外の投資家から短期資金を集め、不動産やインフラ開発などの長期資金(長い期間での返済が必要なお金)へ使っていきました。

ただこの状態は非常に危険です。海外の投資家はいつでも投資マネーを引き上げることができます。それまでの投資マネーは長期資金に既に変わっているため、海外の投資家が短期資金を一気に引き上げようとすると、物理的に返済することができません。

短期資金を借り、それを長期資金で運用すると一般的に資金繰りが苦しくなります。1990年代の新興国というのは、どこもこうした状況に陥っていたのです。つまり、わずかな資金流出があると経済が大打撃を受ける構図になっていたのです。

強いドル政策と赤字で新興国通貨の価値が暴落

そうしたとき、1995年にクリントン政権で「強いドル政策」が進められるようになりました。要は、ドル高になるように傾いていったのです。米ドルとタイ・バーツを連動させることをドルペッグ制と呼び、タイ政府はこれを採用していました。

ドル高になると、本来の変動為替相場制だと、新興国通貨は価値を下げやすいです。新興国は経済基盤がぜい弱であるため、わずかなきっかけであっても通貨安になりやすいのです。ただ固定相場だと、ドル高に連鎖せることになるため、タイ・バーツの価値も上昇することになります。

またタイは多くの外資系企業が進出しており、原料を海外から輸入し、完成品を海外へ輸出する方法によって大きく経済成長していました。ただドル高に連動し、タイ・バーツの価値が高くなると、輸出産業にとっては大打撃となります。

こうして輸出による競争力が衰え、輸出額よりも輸入額が増大し、結果として経常収支は赤字へと転落しました。

ただ、それまで高い成長率と好調な輸出によって稼いでいたにも関わらず、ドル高(固定相場制によるバーツ高)や輸出の減退による赤字により、経済成長に限りが見えてきます。

また高いドル高に連動させる必要があるため、タイ・バーツは非常に割高となります。本来、通貨価値は国の経済状況と比例します。つまり、経済成長力が衰えたタイ・バーツの価値というのは、本来の変動相場だと価値が下がらなければいけません。それにも関わらず、ドルペッグ制によりバーツ高となっていたというわけです。

こうして、1997年になって経済状況の悪いタイの通貨(バーツ)は急激に売られるようになりました。また固定相場制を維持するためには、米ドルを売ってタイ・バーツを買わなければいけません。ただタイ政府の外貨準備高は底をつき、固定相場制を放棄して変動為替相場制への移行を強制させられました。

もともとが割高であったタイ・バーツであるため、変動為替になることによって大量のバーツ売りとなりました。こうした半年後にはタイ・バーツの価値は半分以下となりました。また株価は1年ほどかけて最高値から約9割ほど下落しました。

タイ・バーツが急に変動為替へと移行し、さらには通貨価値が暴落するとなると、当然ながら海外の投資家は投資マネーを引き上げて自国通貨へ戻します。こうして短期資金が急速にタイから消えていくものの、投資マネーは既に長期資金に変わっており、経済がクラッシュしたのです。

IMFによる支援や経済への打撃:金融危機は常にアメリカ発

こうしてタイ政府はIMF(国際通貨基金)に対して救済依頼を出しました。ただ無条件で融資してくれるわけはなく、タイ政府は政府支出の削減や引き締め政策をしなければいけませんでした。

経済状況が悪い場合、普通は金融緩和によってお金を市場へ積極的に出さなければいけません。ただタイ政府はドルペッグ制の維持で体力を既に消耗しており、金融緩和はできません。経済状況が最悪にも関わらず引き締め政策をすることになり、よりタイの経済状況は悪化して多くの企業が倒産したというわけです。

こうした流れから見てわかる通り、アジア通貨危機の一番の原因はアメリカです。もちろんぜい弱な経済基盤やタイ政府によるドルペッグ制が一番の原因ではあるものの、タイでのバブル崩壊のきっかけになったのはアメリカによるドル高政策というわけです。

歴史をみると、ほとんどすべての金融危機はアメリカ発です。アジア通貨危機に限らず、2000年のITバブル崩壊や2008年のリーマンショックなど、世界的な不況はアメリカが原因であるというわけです。世界で最も大きな経済圏をもつアメリカからすべてが始まると理解しましょう。

なお、唯一の例外が2020年のコロナショックです。この場合は中国からコロナウイルスがばらまかれ、結果として世界中が不況に陥りました。ただ中国発のコロナウイルスを除き、それ以外の不況はどれもアメリカが最初のきっかけというわけです。

経済危機は他のアジア諸国やロシア・ブラジルに飛び火

なおタイで固定為替相場制が崩れて経済危機に陥ったというのは、当然ながらほかの国にも飛び火することになります。タイ周辺にある国というのは、どれも同じように当時は固定為替相場制を採用しており、経済基盤がぜい弱であり、金利が高い国ばかりです。

当然、同じ状況になると想定するのは簡単です。事実、タイとほぼ同じ状態だったインドネシアやマレーシア、韓国にも飛び火することで急激な通貨安となり、多くの国でデフォルト寸前となりました。

またアジアとは関係ないロシアやブラジルについても大きな経済危機となりました。事実、ロシアは1998年に財政危機を起こしてデフォルトしています。

当然、こうした新興国の金融危機は先進国にも大きな被害をもたらしました。例えばアメリカでは、当時1000億米ドル(約10兆円)超の資産を運用していた世界最大のヘッジファンドLTCMが破綻しました。LTCMはロシア国債へ大量の投資をしており、ロシアのデフォルトによって大量の損失を出したのです。

アジア通貨危機の震源地はタイであり、被害を受けた国は新興国がメインとはいっても、世界中で金融危機を起こしたというわけです。

アジア通貨危機はヘッジファンドが原因という幻想

なおアジア通貨危機の原因を考えるとき、多くの人が勘違いしていることとして、「アジア通貨危機の原因はヘッジファンド」ということです。事実、ネット上の記事ではそうした記載が多くみられます。

ただアジア通貨危機の原因は新興国のぜい弱な経済状況や短期資金を利用した投資環境、ドルペッグ制、アメリカのドル高政策などであり、ヘッジファンドは関係ありません。

また、ヘッジファンドが為替を操作するのは不可能であることを認識しましょう。参考までに、米ドル・ユーロ(USD/EUR)の一日の取引量は170兆円以上です。また、米ドル・日本円(USD/JPY)の一日の取引量は90兆円以上です。

一つの通貨ペアだけでも、これだけの取引量になります。参考までに、アジア通貨危機で大きな打撃を受けた国について、1日での外国為替市場の規模は以下のようになります。

  • 米ドル/韓国・ウォン:約12.5兆円
  • 米ドル/ブラジル・レアル:約6.6兆円
  • 米ドル/ロシア・ルーブル:約6.3兆円

米ドルとのペアだけでこの規模であるため、日本円や英ポンドなどを含めると、より為替の取引量は大きくなります。

経済危機はヘッジファンドではなく、経済のゆがみで発生する

為替というのは、FXトレーダーだけが関与しているわけではありません。海外に住んでいる人が海外送金したり、企業間でお金の支払いをしたりするときについても外貨の交換が行われます。当然、これだけ取引量が大きい市場に対して、数百億円ほどのお金をヘッジファンドが空売りしても影響はほぼゼロです。

例えば以前、ヘッジファンドマネージャーで有名なジョージ・ソロスはイギリスでポンド危機が起こったとき、ポンドの大量の空売りによって全体で10〜20億ドル(約1,000~2,000億円)の利益を得たことで知られています。ただ、たかだか10〜20億ドルの利益にすぎません。

もちろんヘッジファンドの利益としては非常に優れているものの、為替全体の取引量に比べると圧倒的に少額です。こうした事実を確認すれば、ヘッジファンドが為替操作をしたり、アジア通貨危機を起こしたりすることがいかに幻想であるかわかります。

なお、アジア通貨危機のときにヘッジファンドが大量の空売りをして大儲けしたのは事実です。ただ彼らの空売りによって通貨価値の暴落が起きたのではなく、タイやその他の新興国の経済状況が極めて悪く、明らかに通貨価値が割高だったため、それに便乗してヘッジファンドが空売りをして儲けたにすぎません。

いずれにしても、固定相場の欠点とアメリカによるドル高政策によってアジア通貨危機が発生しました。いまほとんどの国が変動為替相場制を採用しているのは、過去のこうした金融危機が理由なのです。

アジア通貨危機を学び、投資に活かす

株や債券、FXを含め投資家というのは歴史を学ばなければいけません。過去の歴史を知れば、どのようなときに経済状況が悪化し、不景気をもたらすのか理解できるようになります。歴史は必ず繰り返されるため、過去の事例を学ぶのです。

そうしたとき、1990年代に発生した大きな経済クラッシュがアジア通貨危機です。固定相場(ドルペッグ制)やドル高、新興国の経済の冷え込みなど、これらの要素が重なることによって新興国の経済が大打撃を受けたというものです。

このときヘッジファンドは空売りによって大きな利益を作ったものの、ヘッジファンドは直接の原因ではありません。固定相場の欠陥やドル高政策などの影響が原因となり、発生したのがタイを震源地とするアジア通貨危機です。

経済に欠陥があると、必ず崩れるようになります。以前は新興国の高い金利と固定相場によって低リスクで投資家は儲けることができたものの、アジア通貨危機のときに投資していた人はこの神話が崩れ、大損したというわけです。こうしたリスクを理解し、経済の状況を把握したうえで投資するようにしましょう。

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